川柳トーク
やまびこでは創設以来、年に数回、他の吟社からゲストをお招きしています。
そのときは、選者をお願いするだけでなく「わたしの川柳観」を語っていただきます。
会報に掲載させていただいたそのトーク内容を、抜粋して紹介します。
*大根のイラストは、練馬にちなんで漫画川柳作家の木内紫幽氏に描いていただきました。
2016年1月/杉山昌善さんにきく
自分発の自画像
私は創作(=フィクション、平たく言えば嘘)が好きで、これを基本とする現代川柳を楽しんでいます。【雨の日のダイヤル通じそうで切る】ーー脚本家時代に時実新子の句に出会いました。「十七音字のドラマ」と副題がついた公募川柳の頁で、ドラマ作りなら負けないとばかりにこの世界へ飛び込みました。現代川柳は自分発の自画像。「経験とは人間が平等に与えられた才能」で、誰もがいい句材を持っています。自分は新子さんみたいに恋をしたり裏切ったり、そんな凄まじい人生送っていません、と思うでしょ? そこで創作です。作っちゃうんです。吐けないなら演じるんです。100%ウソだとばれますから、小さな体験を核にして膨らます。自分の中にいるどうしようもない自分を川柳の中で解放し、ラブストーリー、サスペンスなどの主人公にする。恋でも犯罪めいたことでも、川柳では誰にも迷惑かけません(笑)。立場や視点を変えて作るのも、誰かに「なりすます」というより、もう一人の自分に堂々と語らせればいいと思います。その方が伝わりますよ。
*脚本家/時実新子に師事/現代川柳「かもめ舎」会員/新堀端川柳会員/著書『今日から始める現代川柳入門』他
2017年3月/江畑哲男さんにきく
文法を川柳の味方にしよう
高校で国語の教師を42年、息抜きにと始めた川柳は39年。どちらも天職と思い、二刀流を続けてきました。週の前半は平成生まれに教え、週末は中高年の方に川柳の魅力を説く。学校では一番年寄り、川柳の会では一番若くて、このギャップが大きい。つかう日本語も全然違います。
川柳に文法は必要か。詩は文法に縛られないのだから、川柳と文法は対極に位置すると考える人が大勢います。文章では物事を正しく伝達することが大事。でも川柳では、その「伝達」にプラスアルファー(気持ち、含蓄、深さなど)が加わります。「俺、水、飲む」ではなく、「私は水だけを飲む」とか「…水、飲まん」とか、そういうニュアンスを持たせるのに、文法的な力はとてもプラスになる。川柳の応援団となってくれます。特に助詞について、 作りっ放しでなく一句一句立ち止まって考える。助詞力をつけるといいですよ。
*東葛川柳会代表、全日本川柳協会常任幹事ほか 著書多数
2015年3月/平野さちをさんにきく
五七五のリズムを大切に
私は、毬がポンポンと軽く跳ねるようなリズムのある句が好きです。川柳の要素として「笑い」は、価値観の差があるので、人によって面白くないかもしれない。「穿ち」も、作者が、実はこうじゃないのかと穿っているわけで、私にはできない。五七五は音(調べ)ですから、やはり「リズム」ですよね。リズム感は誰にとっても共通でしょう。この頃、穿ち派の句が幅をきかせて、下句で世の中を叱るような川柳が圧倒的に抜けるんですが、自分だったらあのようには作らないな、と思います。ポンポン…ときているものがそこで急に止まるわけですから。重厚な重たい句が良くて、軽い句がわるいということはないでしょう。 擬人化だの比喩だの、いじくって、作りすぎてしまう。面白くしてやろうという下心が出た句は面白くないですよ。私は、リズム派です。「リズムの良さでいただきました」でいいと思うんです。
* 番傘川柳本社同人・杉並川柳同好会・NHK川柳講座添削講師・句集『あかさたな』を上梓
2014年7月/播本充子さんにきく
課題吟でも思いを込めて
十数年前に作った私の句に「三人の息子と八月の平和」があります。この句が出来た時に「川柳を習って本当によかった」と思い、叶う事なら自宅の庭の隅に小さな句碑として残したいと本気で考えています。自他ともに認める「川柳バカ」ですが、課題吟でも、全部思いを込めて作りたい。何時でも何処ででも、見たこと、聞いたこと、感じたこと、思いついたこと等々、その場ですぐ、ノートに、メモ用紙に、書きとめるようにしています。 極めてフツーの主婦ですから、川柳部屋に籠って作句しているわけではありません。一句に仕上がらなくても頭に浮かんだすべてを書き残しておけば、家事や外出で中断しても、すっと戻れます。上5・下5が決まらなくて二年も三年も未完成のものもあります。目の前を飛び回っている語群の中にふっとそれを見つけて、虫捕り網で空中キャッチした時の快感といったらありません。 斬新な発想で、本質を鋭くついた句に憧れています。
* のぞみ川柳会代表、ふあうすと川柳社同人、 川柳人協会会員